本書は、「UML (Unified Modeling Language)」の書き方の本です。モデリングの本だと思って買うと、たぶん期待を裏切られると思います。モデリング技能認定試験 (旧 UML技術者認定制度)のL1-T1 レベル(OOの基礎概念、UML入門的知識)を学ぶための本です。
本書は、UMLの使いどころを学ぶのにいいと思います。UML解説の本ですから、(チュートリアルの)ソフトウェア開発設計のすべての場面でUMLを使っているのは、実際の現場からしたら少し考え物ですが、どの段階でどのUML図を使うかを見極める勉強にはなると思います。
モデリング技術についてはそれほど難しいことは出てきません。純粋にUMLの書き方と使いどころを学ぶ本だと思います。UMLをまなぶ最初の本か、2冊目の本にするとちょうどよいレベルだと思います。その後は、「モデリング」を学ぶ書籍を読み進めていくといいと思います。読みやすくて好きです。
特徴
本書は、UMLとはどんなものかという疑問に答えてくれるような書籍です。何ができて、どうすごいのかということがなんとなく分かるようになる本です。
しかし、どう使えばいいのか、こういうドメイン(問題領域)の設計はどうすると再利用性があがり効果がでるのか、と言ったような具体的な解法を学ぶための本ではありません。純粋にUMLを学ぶ。導入する。ための書籍となっています。
前半では、オブジェクト指向とUMLについての説明と、「ITマネージャのためのUML講座」としてソフトウェア開発の現場でUMLを導入するためにはどうすればいいのかを説明しています。
後半は、チュートリアル形式になり、Chen君とJun先輩の二人がオブジェクト指向分析から設計までの流れをお話形式で進めていきます。UML1.X で定義されている図をほとんど使って進められていきますので、どこでどの図を使うのかを理解するのに便利です。 参考: チュートリアル
最後は、試験問題対策として、UMLに関する問題と解答がそれぞれ載っています。ここを利用すれば、モデリング技能認定試験(L1-T1)の試験勉強になります。
本書の対象読者は、UMLをまったく知らないか、あるいは、UMLの記法だけは知っているエンジニアです。UMLを学ぶための最初の一冊目か、二冊目に向いていると思います。
モデリング技法や、設計パターンを学ぶなら、本書より『実践UML』がおすすめです。非常に詳しくUMLモデリングと言うものを学べると思います。
覚書き
ユースケース
システムのユーザがシステムを利用して遂行する単位業務の一つを抽象化したもの。ユースケースをすべて集めると、システムがどう使われるかがすべて表される。
アクターは、既存のシステムやデータベースなどの外部システムもなりうる。
ユースケースの単位を見つける手っ取り早い方法は、次の処理までに時間がかかる(一息置くことができる)かを考える。
(例: 画面に検索キーワードを入力して、検索ボタンを押す。(一呼吸))
クラス図
ユースケースシナリオから、名詞や名詞句を検討すると、クラスを見つけやすくなる。システムにとって意味のある概念であるか、業務にとって重要な言葉であるかをチェックする。
(例: 物流システムであれば、「物」よりも「在庫」などとした方がよい)
アクターはクラスにはなりません。システム境界をはっきりさせて、アクター(外部システムなど)がクラス図に表れていないかをチェックします。
参考
- UMLモデリングに一味加えたいときにおすすめ。
- オブジェクト指向設計の原則が学べる、知っている中でもかなりおすすめな本。
- UMLの表記法を学ぶのに最適。
- UMLとビジネスモデリングをセットで学ぶのにいいかも。