タイトル
ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち
著者
ポール グレアム (著), Paul Graham (原著), 川合 史朗 (翻訳)
出版社
オーム社
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本書は、コンピュータの世界で今何が起こっているかを、より広い世界に向けて説明しょうとする試みだ。プログラマのためだけの本ではない。例えば第6章では、どうしたら裕福になれるかを論じている。一般の人々にとってもこれは興味ある話題だろう。

はじめに

本書は、コンピュータの世界に生きる人への 金言集、あるいは 道しるべ になる言葉であふれています。 世界は今やコンピュータが身近な存在になっています。そして、コンピュータというのはハッカーがつくっています。 ハッカーの頭の中を理解することで、世界がどのような方向に向かっているのか、そういうことを考えさせてくれるのが本書です。

『ハッカーと画家』は、ハッカーの世界とその住人の動機を探る。明解で考え抜かれた散文を、歴史上の例で彩りながら、ポール・グレアムは読者を「知的な未開の西部」へと誘う。

本書カバー

おぼえがきメモ

腕のよいプログラマは仕事が速い

プログラマの仕事というのは、集中して一気に素早く行うもの。 ゆっくりと念入りに作り上げるものは確かにアイデアを精密に実現したものになるだろうが、おそらくそのアイデアは間違っている。 遅く念入りな仕事は早過ぎる最適化 だ。 プロトタイプを速く仕上げて、新しいアイデアを得て行くほうがよい。 価値は新しいものにある。最初に何かを作り出したいと思うなら速くやることは重要だ。

美しいものを創る最善の方法

それは、すでにあるものに微妙な改良を加えたり、すでにある考え方をすこしだけ新しい方法で組み合わせたりすることだ。 日本ではそれを 守破離(しゅはり) と言ったりする。

よいソフトウェアを書くには、ユーザがどれだけ何も知らないかを理解する必要がある。 同じようによいソースコードを書くには一目で内容が分かるべきである。

プログラムは、人々がそれを読むために書かれるべきである。
たまたま、それが計算機で実行できるにすぎない。

お金は富じゃない

富とはもっと根本的なものだ。私たちが欲しがるもの、食物、衣服、住居、車、道具、旅行、そういうものだ。 お金を持っていなくても、何かを命令すれば全部やってくれる機会があればお金なんていらないし、南極のど真ん中で100億円もっていても仕方がない。 お金は省略記法に過ぎないほとんどのビジネスがやっていることは富を生み出すこと だ。人々が欲しがることをやるんだ。

困難な方を選ぶ

「階段を駆け上がれ」

もし君が小さく非力な男で、巨大で太ったいじめっ子に追いかけられているとしたら、上に逃げる?下に逃げる? 上に逃げた方がきっといい。いじめっ子はおそらくあなたと同じくらい速く階段を駆け下りることができる。 でも駆け上がるときはその体重が負荷になるだろう。もちろん、君だって駆け上がるのは苦しい。でも相手のほうがもっと苦しいはずだ。

企業の選択、ソフトウェアの選択を迫られたとき、困難度に比例した価値があったとすれば、困難な方を選ぶべきだ。 競争相手、ましてや大手は、寄り困難な土俵で私たちを追いかけるのに苦労するだろう。

攻撃は最大の防御になる。難しい問題を選ぶことから始め、決断が必要な場面では常に難しい方をえらべばいい

センス

どうやったら良いものが作れる?センスは個人の好みだというのは論争を避けるにはいい方法だ。でも、それは真実じゃない。 センスはデザイン力と言い換えられるのかもしれない。別に絵だけのことをデザインというのではないけど、美(良いデザイン)とは何かを考えることはセンスを鍛えることになる。

  • 良いデザインは単純である
  • 良いデザインは永遠である
  • 良いデザインは正しい問題を解決する
  • 良いデザインは想像力を喚起する
  • 良いデザインはしばしばちょっと滑稽だ
  • 良いデザインは難しい
  • 良いデザインは簡単に見える
  • 良いデザインは対称性を使う
  • 良いデザインは自然に似る
  • 良いデザインは再デザインだ
  • 良いデザインは模倣する
  • 良いデザインはしばしば奇妙だ
  • 良いデザインは集団で生起する
  • 良いデザインはしばしば大胆だ

素晴らしいハッカー

素晴らしいハッカーっていうのは集まる傾向がある。ハッカーは道具にこだわる。仕事場にもこだわる。 ハッカーは面白いことが大好きだ。面白いことってなんだろう?難しいこと?誰もやったことのないこと?馬鹿みたいなこと? たぶん、何が面白いかを感じるところが、ほんとうの意味でのセンスなんじゃないかな。

「普通のやつらの上を行け」

感想

ポール・グレアムのエッセイはやっぱり力強いです。訳者の方がすごいのかもしれませんが、すごくすっきりと言いたいことが頭に入ってきます。 何かを変えたい、何かの後押しが欲しい、何か新しい視点を取り入れたい。そういう時にポール・グレアムのエッセイはとても参考になります。

プログラマやハッカーに関するエッセイ集では他にも『情熱プログラマー ソフトウェア開発者の幸せな生き方』 『Joel on Software』 『More Joel on Software』なんていうのもあります。 どれもオススメです。