オブジェクト脳、略して『オブ脳』の芽生えはエンジニア人生の転機となる。と本書のカバーに書いてあります。最近のシステム開発の現場でオブジェクト指向という言葉を聞いたことが無い人はいないと思います。組み込みの業界でさえオブジェクト指向を取り入れた設計・実装が行われています。
本書は、エンジニアに必須の知識となった『オブジェクト指向』を理解するための要領本です。本書を読めばきっとあなたにもオブジェクト脳が芽生えることでしょう。オブジェクト脳を持った人は、プログラミングの要素をオブジェクトとして捕らえます。
オブジェクト指向を学ぶ理由なんて何でも良いんじゃないですか?「周りがやっているから自分もオブジェクト指向を身に付けたい」という理由でもいいと思います。どんな不純な動機でも本書を読めばオブ脳の芽が生えてくるのですから。オブジェクト指向を学びたいという人に、おすすめです。
特徴
本書の特徴は、なんと言ってもそのわかりやすさです。オブジェクト指向についての本はさまざまなものが出ていますが、本書はそのどれよりもわかりやすいと思いました。
まず、専門用語がほとんど出てこないところが特徴だと思います。後半のEJBの解説は、前半のオブジェクト指向解説と比べて極端に難しくなってしまっていますが、本書は前半だけでも非常に価値が高いと思います。逆に、後半のEJBの部分は無くても良いと私は思いました。
EJBとは何か 【Enterprise JavaBeans】 : IT用語辞典
オブジェクト指向の3大基礎である「継承」「カプセル化」「ポリモーフィズム」について、しっかりと解説しているところが魅力です。中でも、ポリモーフィズムに関しても説明が、非常に丁寧です。オブジェクト指向で最初につまずくのがこのポリモーフィズムということから、特に力を入れているのが高評価です。
オブジェクト指向解説で使われているサンプルが、「社長命令、起立」というものです。社長と社員とのやり取りを、オブジェクト指向を使って表すとどうなるかという点から解説しています。ここでの解説を理解すると、世の中ほとんどが、「社長命令、起立」が使われているということに気づきます。
非常にわかりやすい解説と、ちっとも難しくないサンプルが本書の魅力です。後半についているEJBの解説はかなり難しく、初心者は挫折してしまう可能性があります。その部分を本書に入れるべきだったのかというのは疑問ですが、全体的に見ても非常に「買い」の一冊だと思います。新人研修の参考資料などに使えると思います。
参考
- オブジェクト指向に関しての解説なら、本書もおすすめです。C++プログラマ向け
- オブジェクト指向でなぜ作るのか?その答えは本書のなかで